突然ですが、皆さんは今年の大河ドラマ、『光る君へ』を見ているでしょうか。
源氏物語の作者・紫式部の人生を描く物語で、2024年4月15日現在、15話まで公開されています。
【NHK公式】大河ドラマ「光る君へ」(2024年)。主人公は紫式部(吉高由里子)。 平安時代に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた女性。彼女は藤原道長(柄本佑)への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で、光源氏=光る君のストーリーを紡いでゆく。変わりゆく世を、変わらぬ愛を胸に懸命に生きた女性の物語。
引用:https://www.nhk.jp/p/hikarukimie/ts/1YM111N6KW/
吉高由里子さん演じる「まひろ(紫式部)」がおちゃめで聡明で、とても魅力的なキャラクターです。
歴史好きを自称している筆者ですが、実は大河ドラマをしっかりと見たことがなく、昨年度の『どうする家康』をなぜか全話終わってから一気見し、しばらくロスに陥るくらいハマりました。
そして、今回の『光る君へ』はなんと紫式部が主人公!ということで、毎週欠かさず見るようになりました。
なんで『光る君へ』の話をしたかと言いますと、筆者が“競技かるたを始めよう”と思っているからです。
競技かるたを始めたいと思ったきっかけ
競技かるた!?と思いますよね。わかります。
実は筆者、小学生の頃に百人一首(といっても「五色百人一首」という子供向けの5色に分かれたもの)を夢中になってやっていて、北海道中の五色百人一首プレイヤーが参加する大会の黄色札の部で準優勝したことがあります。これが人生の中で1番の栄光です。
そうして大人になって、鑑賞する趣味ができたはいいものの自分でやる趣味ってないな…などと考えていながら過ごしていましたが、数年前から友人に“記憶力”を褒められることが増えてきました。
自分ではそう思ったことはなかったのですが、筆者は友人至上主義で友人に言われたことは大体鵜呑みにしますので、記憶力をもっともっと自分の強みにしたいと思い、ひとつの結論に辿り着きます。
そう、それがまさしく、競技かるたです!!!!!
思考回路が非常に短絡的なので、過去の栄光に縋りつき、記憶力と集中力を身につけようと考えました。(アホですね〜!)
もうかるた会へ見学に行って、入会の意思表示もしました。あとは入会するだけです!
ということで今回は、そんな競技かるたを始めようと考えている筆者が自分の感覚を取り戻すためにも、いくつかの歌と、百人一首を題材にした作品を紹介していきたいと思います。
歌を知ろう!
『光る君へ』の話に少し戻りますね。
『光る君へ』を熱心に見ていることと競技かるたに一体何の関係が?と思いますよね。わかります。
実は、競技かるたに用いられている百人一首の中には、
「めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな」
という、紫式部が詠んだ歌があるのです。
これは「久しぶりに逢うことができたのに、それがあなたかどうかわからないうちに帰ってしまうなんて、まるで雲間に隠れてしまった夜半の月のようではありませんか。」という意味で、
幼い頃、父の仕事の都合で離れて暮らすことになった友人とやっと再会できたかと思ったのに、ろくに話すこともできずに帰ってしまった寂しさを詠んだものです。
背景を想像してもう一度歌を見てみると、すごくしんみりと寂しい気持ちになりますよね…
このように、たった31文字ですが、歌をひとつひとつ読み解いていくと実はすごく奥深いのです。
歌の種類
百人一首は、以下の種類に分かれています。
種類 | 数 |
---|---|
春 | 6 |
夏 | 4 |
秋 | 16 |
冬 | 6 |
恋 | 43 |
羇旅(きりょ) | 4 |
離別 | 1 |
雑(ぞう) | 19 |
雑秋 | 1 |
こう見ると恋の歌が多いですが、これは歌を選んだ藤原定家が叙情を重んじる人だったからとされています。素敵〜!
今回はこの中から、筆者が特に好きな歌を紹介します!
筆者の好きな歌
【春】9番:花の色は 移りにけりな いたづらに 我身世にふる ながめせしまに/小野小町
【現代語訳】
花の色もすっかり色あせてしまいました、降る長雨をぼんやりと眺めているうちに。かつてのわたしの美しさも、その花の色のように、こんなにも褪せてしまいました。
小野小町は、六歌仙*1に選ばれるほどの歌人。そして当時の伝説の美女としても有名で、世界三大美女として知られています。
この歌では花に自分の姿を重ね、時間と共に散ってゆく美しさと切なさを歌っています。日本の無常観にマッチしていますよね。
【離別】16番:立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む/中納言行平
【現代語訳】
あなたと別れて因幡の国へ行くけれど、稲葉山の峰に生えている松のように、あなたが私の帰りを待っていると聞いたなら、すぐに帰ってまいりましょう。
作者の中納言行平の別名は在原行平。次に出てくる在原業平の異母兄です。
行平が因幡の地(現在の鳥取県)へ赴任する前の送別の宴で詠んだ歌とされていて、現在でも「別れた人や動物が戻ってくるように」という願掛けで使われることがあるそうです。
さまざまな思いを抱えながら遠い地へ行く寂しさと、待っていると言われたらすぐにでも帰ってくるという行平の人柄が表現された素敵な歌です。
【秋】17番:ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは/在原業平朝臣
【現代語訳】
神代の時代(神々が住んでいた時代)ですら、こんなに不思議で美しいことは起きなかったに違いない。竜田川一面に紅葉が散りしかれ、流れる水を鮮やかな唐紅に染めあげるなんて。
これは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。筆者の推し歌人、在原業平が詠んだ歌です。
在原業平は小野小町と並ぶ伝説の美男子、そして六歌仙のひとりでもあります。しかもめっちゃ出世します。そりゃモテるわけで、平安きっての色男と言われています。
この歌は屏風に描かれた絵に合わせて和歌を付けた「屏風歌」と呼ばれる歌ですが、歌を送った二条の后(藤原高子)とは恋愛関係にあったと言われています。さすが色男…!
擬人法や倒置法などの技法も用いられており、紅葉でいっぱいの鮮やかな竜田川の情景が浮かんでくるようです。
【春】33番:久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ/紀友則
【現代語訳】
こんなにも日の光が降りそそいでいるのどかな春の日に、なぜ花は落ち着きなく散っていくのだろうか。
紀友則は『土佐日記』の作者・紀貫之のいとこです。
この歌の筆者が好きなところは、「久方の 光のどけき 春の日に」という、上の句の部分です。
「久方の」は枕詞*2で、「空」「月」「光」「夜」などにかかります。この歌の場合は「光」にかかっていますね。
光が差し込むのどかな春の日の情景が浮かんでくるようで暖かい気持ちになりますし、何より「久方の」という言葉の響きが希望に溢れている感じがして、昔からすごく好きな歌です。
【恋】77番:瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ/崇徳院
【現代語訳】
川の流れが早く岩にせき止められた急流が2つに分かれてもまたひとつになるように、愛しいあなたとわたしの間も、いつかきっと結ばれるものと思っている。
この歌を読んだ崇徳院の別名は崇徳天皇。実は、日本三大怨霊の1人としても知られています。
離れ離れになってしまった恋人への激しい思いを詠っている一方で、鳥羽上皇に強引に奪われ、その後息子をと願ってもやはり返ってくることはなかった天皇の位に対しての無念の思いが込められていると解釈する研究者もいるようです。
最期は讃岐に流されて一生を終え、怨霊としてその名を轟かせることになりました。
恋にせよ位にせよ、いつか訪れるその時を強く待っていたのだろうと思うと、切ない気持ちになりますね…
用語解説
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AD%E6%AD%8C%E4%BB%99引用:
https://www.weblio.jp/content/%E6%9E%95%E8%A9%9E引用:
百人一首を題材にした作品
紹介してきたようにさまざまな読み解き方がある百人一首。
ここからは、その百人一首を題材にした作品を紹介します。
『ちはやふる』- 末次由紀
あらすじ
まだ“情熱”って言葉さえ知らない、小学校6年生の千早。そんな彼女が出会ったのは、福井からやってきた転校生・新。大人しくて無口な新だったが、彼には意外な特技があった。それは、小倉百人一首競技かるた。千早は、誰よりも速く誰よりも夢中に札を払う新の姿に衝撃を受ける。しかし、そんな新を釘付けにしたのは千早のずば抜けた「才能」だった……。
引用:https://be-love.jp/c/chihaya.html
競技かるた人気の火付け役とも言えるこちらの作品。この作品なしにかるたを語ることはできないですね。
競技かるたを通して主人公・千早が成長していくストーリーですが、歌の意味についての解説が入るシーンもあり、その歌になぞらえた展開があったりもするので、百人一首自体を知ることもできます。
学生時代を思い出したり、かるたをしていた頃のことを思い出したりして、何度も感情が揺さぶられました…
特に何度か出てくる「運命戦」のシーンでは、その緊迫感がこちらにも伝わってくるほどどきどきしてしまいます。
「運命戦」が何かは是非作品をご覧になってみてください。必見です!!!
漫画
漫画は全部で50巻あり、完結済みです!
アニメ
アニメは2019年のシーズン3以降新しいものが出ていないです。
動きと声がつくことで、競技中の臨場感がさらに高まる感じがします。続きが、見たい…!涙
見放題の配信サービスは以下になります。
実写映画
映画もすべて視聴しましたが、実写なのでアニメよりもさらに臨場感や緊迫感がありました。
特に感動したのは松岡茉優さん演じる最年少かるたクイーン・若宮詩暢(わかみやしのぶ)。
筆者はもともとストイックで役に真摯に向き合っている感じがあって松岡茉優さんがすごく好きなのですが、かるたの取り方・柔らかい空気感の中にある強さなど、立ち居振る舞いが詩暢ちゃんそのものでした。実際にいたら絶対こうだ…!という説得力があります。
見放題の配信サービスは以下になります。
『超訳百人一首 うた恋い。』- 杉田圭
あらすじ
鎌倉時代初期の1235年(文暦2年)、宇都宮頼綱の依頼で藤原定家が選んだといわれている百人一首。
現代ではカルタとして有名ですが、じつはその中身は、みやびな歴史を語るには欠かせないスーパースターが多数登場し、恋の和歌が43首も入った、ドラマチック&ロマンチックな詞華集です。成立から千年近く日本人に愛され、詠い継がれてきた、人間ドラマ、恋愛ドラマが、31文字の中に閉じ込められています。
引用:http://utakoi.jp/intro/index.html
『超訳百人一首 うた恋い。』はそんな百人一首のうつくしくせつない数々のドラマを、わかりやすい超訳コミックでお届けする現代の百人一首絵巻です。
こちらは百人一首そのものにフォーカスした作品です。百人一首のほぼ半分を占める恋の歌について、ひとつひとつ丁寧かつ美しく描かれています。
先ほど在原業平が推し歌人ですという話をしたかと思いますが、何を隠そうこの作品がきっかけです。
漫画
『うた恋い。』自体は4巻分まであります。2023年に新装版が出たようです!
他にも『うた変。』という作品が2作出版されているので併せてどうぞ。
アニメ
筆者はアニメで存在を知ったのですが、映像も少し絵巻っぽいタッチになっています。
推しである在原業平は諏訪部順一さんが声を当てているのですが、あまりにもキャラクターとの親和性が高いため、諏訪部さんのファンは必見です。
他にも梶裕貴さんや下野紘さん、石田彰さんなど、著名な声優さんが出演しているので、声優さんが好きな方にも是非おすすめしたい作品です!
見放題の配信サービスは以下になります。
まとめ
今回は、百人一首の中のいくつかの歌と、百人一首を題材にした作品を紹介してきました。
古文の時間でしか触れない縁遠い存在に感じがちかもしれませんが、意外とそんなこともなく、昔の人も同じようなことを考えていたりして、なんだか親近感が湧きませんか?
皆さんもぜひ推し歌人や好きな歌を見つけてみてくださいね〜!
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