生成AIの認知度が上がってきた事で、ChatGPTなどを実際に触ってみた事がある人も増えたのでは無いでしょうか。しかしながら、使い方を間違えると、著作権侵害などのトラブルに見舞われる事ある為注意が必要です。前回はそもそも「著作権」とはどういったものかという事を纏めました。今回は、文化庁が公開しているセミナー資料を参考に「著作権侵害の要件」に関して纏めていきます。
※あくまで個人的考えや感想です。実際に生成AIを利用した生成物の利用は、ご自身で文化庁の資料、有識者の見解、過去の事例、判例等をご確認の上、自己責任で行う様にしてください。
▶️参考資料
著作権の侵害の要件
まず、著作権の対象となる行為(著作者が持つ権利)を行う際は、著作権者から許諾を得る事が原則です。(法第63条第1項)
※著作権の対象となる行為とは前回の記事に纏めた内容です。
他社の著作物を「権利者から許諾を得ておらず」、「権利制限規定に該当しない」にも関わらず著作権の対象となる行為を行なった場合は著作権侵害になります。
◾️著作権侵害の要件として、裁判例では下記2点を満たす場合とされています。
- 後発の作品が既存の著作物と同一、又は類似していること(類似性)
- 既存の著作物に依拠して複製等がされたこと(依拠性)
類似性とは
「類似性がある」と判断する為には、「表現上の本質的な特徴を直接感得できること」が必要です。「創作的表現」が共通していることが必要であり、「創作的表現」でないアイデアなど「著作権物」の中の「著作物性の無い部分」が共通するにとどまる場合は、類似性があるとは判断されません。
第三者が「これとこれはほとんど同じ」と直感的に感じる物は「類似性がある」と判断出来るでしょう。
但し、単なる事実であったり、ありふれた表現などは共通していても類似性は認められない
依拠性とは
「依拠性がある」と判断する為には、「既存の著作物に接して、それを自己の作品の中に用いること」が必要です。既存の著作物を知らずに「偶然に一致」した「独自創作」などの場合は依拠性があると判断されません。
作者本人が「著作物を模倣して」制作した物は「依拠性がある」と判断出来るでしょう。
作者本人が「著作物を模倣」したかどうかの証明は難しいですが、たとえ作者がその「著作物は知らず、偶然に一致した」と主張したとしても、客観的に模倣していなければここまで類似するとは考えにくい場合も「依拠性がある」と判断されます。
著作権侵害をするとどの様な罰則がある?
著作者は、著作権の侵害に対し「侵害行為の停止・予防措置の請求」や、著作権侵害によって被った損害の賠償請求などが可能です。また、調査区権侵害行為は刑事罰の対象にもなっています。
※「侵害行為の停止・予防措置の請求」とは著作権の侵害者に対して、削除などを直接要請する事や、削除等を求める訴訟を裁判所に提訴すること
※「著作権侵害の刑事罰」は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科(法人は3億円以下の罰金)
著作権侵害罪はあくまで「親告罪」である
前回と今回で、文化庁にて公開されている資料やテキストを元に著作権に関してつらつらと書いて来ましたが、実は著作権侵害だが、著作者が提訴していないだけ、という事が多々あります。
著作権侵害罪はあくまで「親告罪」の為、著作権者が声を上げない限り罪に問われる事はありません。
ファンアートなど、著作者とファンの信頼関係の元に成立している分野があるのも確かですが、生成AIで生成された「テキストデータ」や「画像データ」や「音楽データ」などは、しばらくの間は厳しい目で見られる様な気がします。自己防衛の為、著作者の権利を守る為に、しっかりと著作権を理解したうで、活用する事が重要です。
今回は「著作権侵害の要件」について纏めてみました。次回から文化庁のセミナー資料より、いよいよ「AIと著作権」の内容に触れ、生成AIを利用する際の注意点を考えていこうと思います。
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